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株式会社札幌エネルギー供給公社 雪冷熱利用

都心北融雪層の導入経緯

札幌市は大都市(人口196万人)としては世界的にも豪雪地帯に位置し、その降雪量は5mにも達します。冬期間の多量の降雪は都市機能の障害となり、雪対策は最も重要な行政課題のひとつになっています。
こうした状況から、冬の都心部の都市機能を効率よく維持するため、雪処理施設の確保及び遠距離にある郊外の雪堆積場まで雪を運搬するトラックの効率的な運用が課題となり、また、トラックの雪運搬距離を短縮し、その運搬エネルギーの削減(省エネ)と排気ガスによる大気汚染防止、雪堆積場の河川汚染等の都市環境問題の改善を図るため、都心部の限られた空間に利便性の高い雪処理施設として融雪槽を設置しました。この融雪の熱源として、環境低負荷型の当社温熱の夜間余力設備を、融雪の熱源として有効に活用する施設です。

■都心北融雪槽施設概要(札幌市施設)

(1) 形状:幅23m×長さ33m×水深6m×1池
(2) 有効容量:4,000m3
(3) 投雪口:4箇所
(4) 融雪能力:4,000m3/日
(5) 放流先:公共下水道

雪冷熱利用の経緯と設備概要

前述の融雪槽は2月下旬をもって施設稼働を終えますが、市内はまだ積雪状態にあるので、札幌市はこれを融雪槽に貯め込み自然融雪にて発生する冷熱(冷水)エネルギーを地域熱供給の冷房熱源として利用する計画を立案しました。
札幌市及び当社にて雪冷熱利用システムの具体案を協議後、2002年にその利用実証実験設備を設置し、2003年4月から2007年3月まで実験とその検証が行われました。

■雪冷熱利用システムフロー

既存融雪槽設備に一部改造を行い、槽内に貯められた雪が自然に溶け出すことにより発生する冷水を熱交換器を経由して冷熱として取り出し、当社の冷水供給導管の水を冷やした後、地域熱供給を受けているビルの冷房熱源の一部として使われる仕組みです。

雪冷熱利用の状況

雪冷熱利用は、毎年降雪が終わる4月に、雪冷熱として冷えた状態が維持できる約3週間行われ、年中冷房が必要なコンピューター室等に供給される冷熱の製造熱源の一部として使われました。
利用期間の冷熱製造設備としては、他に外気冷熱(自然エネルギー)を有効活用するフリークーリングシステムや電動ターボ冷凍機をバックアップとして運用しています。
毎年の雪冷熱利用量と全冷熱製造量の実績は、以下の通りです。

■雪冷熱利用実績

項目 2020年 2021年 2022年
利用期間1ヶ月中の
全冷熱供給量(雪冷熱含む)
GJ 1,396 1,446 1,502
年間冷熱供給量(雪冷熱含む) GJ 38,898 38,709 38,158
雪冷熱利用量 GJ 0 0 384
利用期間中の冷熱供給量
に占める雪冷熱利用割合
0.0% 0.0% 25.6%
年間冷熱供給量に占める
雪冷熱利用の割合
0.0% 0.0% 1.0%

※利用期間は、4月である。

雪冷熱利用実用化に向けての今後の取り組み

雪冷熱を利用した地域熱供給は、大都市でありながら豪雪地帯でもあるという札幌市の特徴を生かした地球温暖化防止のための一策であり、大変有意義なものです。
当社は今後、より効果的に雪冷熱を利用出来るようにするために、投雪量増加の検討や雪冷熱運用方法の変更による効果の比較検討という実験を継続していきたいと考えています。

PH
深夜、ダンプにより雪を投雪口から融雪槽に搬入
(貯雪槽にはある程度の水を入れてあり、残りを雪で満たす。この槽を満たすために約250台のトラックが投雪する)

PH
融雪槽に投入され、堆積した雪の姿
(時間とともに溶け出し、0〜1℃の冷水となる)